第1章

57/91

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/614ページ
第一、今ので被害も成果も無いから、結果としては同じこと。 「ば、はわわわわわわわ…………………」 空耳が聴こえた。多分空耳だ、いやきっと空耳だ。そうに違いない。 だからこうして、自分の拳が泳いだ軌跡の、その真下にエリスの頭が在るのは幻覚だ。最後に見た服装で、ツーテールで白い袖付きワンピースのフリフリまで完全再現されている精緻な幻術だ。 おのれ、太ぇヤツも居たものだ。真っ昼間から絡め取られるほど、こちとら素人でもないというのに。ムカツク限りである。 ただ、両手に抱えたぬいぐるみまでは知らない。リリーに突撃した際、教室の片隅に有った気もしないでもないけど、だとしたらリサーチが緻密すぎる。 この点は、高評価をあげねばなるまい。 「きゅ、きゅうぅぅ…………」 「だああああああああ!!! 待て、待てエリス! まだ逝くな! 逝くんじゃない!!」 ガッツリばたんきゅーしたエリスに近寄り、完全にダメになった意識へ向け呼び掛ける。泡はどうやら吹いていないけど、熱にうなされたみたいに苦悶の表情を浮かべている。
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加