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第一、今ので被害も成果も無いから、結果としては同じこと。
「ば、はわわわわわわわ…………………」
空耳が聴こえた。多分空耳だ、いやきっと空耳だ。そうに違いない。
だからこうして、自分の拳が泳いだ軌跡の、その真下にエリスの頭が在るのは幻覚だ。最後に見た服装で、ツーテールで白い袖付きワンピースのフリフリまで完全再現されている精緻な幻術だ。
おのれ、太ぇヤツも居たものだ。真っ昼間から絡め取られるほど、こちとら素人でもないというのに。ムカツク限りである。
ただ、両手に抱えたぬいぐるみまでは知らない。リリーに突撃した際、教室の片隅に有った気もしないでもないけど、だとしたらリサーチが緻密すぎる。
この点は、高評価をあげねばなるまい。
「きゅ、きゅうぅぅ…………」
「だああああああああ!!! 待て、待てエリス! まだ逝くな! 逝くんじゃない!!」
ガッツリばたんきゅーしたエリスに近寄り、完全にダメになった意識へ向け呼び掛ける。泡はどうやら吹いていないけど、熱にうなされたみたいに苦悶の表情を浮かべている。
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