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恐らく、泡を吹く暇もなく脳内がパンクしたんだ。これは流石に、正直に可哀想なことをしてしまった。
「ああ~~…………大丈夫かエリス?」
心配そうに覗き込むと、星純は肩に手を掛ける。容態の善し悪しはともかく、派手に倒れたし脳髄の方にダメージが無いとも言えない。そういう、紳士然とした気配りだった。
「ただいま戻りました~~いやいや、朝はやっぱりお店も空いててかなりスムーズにーー」
息を飲む音。
バサリ、これは紙袋を落とす音か。で、向こうからーー星純の背中側から見た風景を考えてみよう。
倒れる幼女に、汗ばんだ様子の男が覆い被さる図。リリーは現状を正しく把握する。
「わ、わたしとは遊びだったんですね!!」
「それもうなんか色々違うから!! 泣くぞいい加減!!」
もう勘弁してくれ。心の断末魔を、この女の子が聞く耳を持つか分からない。
とはいえ星純も、声を張り上げなければいけない状況だ。というよりも、言い訳が必要な状況とでも言うべきか。
リリーは全てを把握した上で糾弾し、何か泣きの演技まで交えて真に迫っている。エリスは言わずもがな、目も開けない。
老婆はいなくなっていた。それこそ、音も影すらも残さずに。
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