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ーーバタン。お決まりの音が響き。
「あ、お帰り~~。ごはん出来てるよ」
お決まりの文句が出迎える。ワンフロアの中をセパレートする、仕切り壁の向こう側。
男性の声、聞き慣れた緩い調子で。老婆はフードに手を掛けると、何時もと同じ定型文でとって返した。
「慎みたまえグレゴール2等。浸透作戦中だ」
フードが背中に落ちきるより早く、それは泡のように弾ける。どころか、老婆の纏ったボロも杖も泡状の、光の粒となって消えていく。
「今回の外出は別口でしょ? 作戦行動規定に引っ掛からない発言だと思いますがどうです、劉小鳴(リュウ=シャオメイ)曹長どの」
「敬意の問題だ」
ボロ布の下から現れるのは、老体らしい矮躯ではなく、腰の曲がった身体でもない。すらりと、芯の通った居姿を晒す、一人の女性。
薄明かるい藤色の髪をサイドアップに、きつく尖った両目をしかめた。引き絞られた身体を覆う、黒いボディスーツが酷く威圧的に見える。
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