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「探査触腕(プローブ)ですか? いえ、全く」
「そうだ。それが私の特性だからな」
その筈なんだがな。小首を傾げながら、劉はグレゴールに向き直る。同時に、二人の合間に細く長い触手が現れた。
こちらもその表面が泡立つよう、光の粒子がぱらぱら輝く。親指ほどの太さの探査触腕━━プローブは、劉の纏めた髪の付け根より伸びていた。ボディスーツと同じく、光沢を含んだ黒色。
そこから差し出される皿を受け取り、グレゴールは怪訝そうに口を開いた。
「どうかしましたか? ひょっとして、作戦失敗とか?」
「いや。マーカーと出力機の設置は完了している。座標固定後、『ソドム』の準備が済み次第すぐにでも起動はできる。欺瞞工作も万全」
「では何故?」
「…………最後のマーカーを設置した、帰りがけの時だ。私は奇妙な連中と接触した。厳密に、話したのは一人の男だったが」
これにグレゴールは眉をひそめた。必要最低限の接触は慎んで然るべきだし、痕跡は少ないに越したことはない。
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