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劉はその怪訝を承知に、話を進める。
「対象は金髪の少年、突然に現れた」
「それは、空間移動ですか? だとしたら……」
「ああ、作戦に支障が出る。だから私も、敵情視察として少年と接触した。が、少年自身もその理屈は理解していないようだったのでな、同伴者のサンプルを採取するに留めた」
これがそうだ。劉がグレゴールに差し向ける触手に、小指ほどの大きさしかない瓶が握られている。
小瓶の中には一つの繊維、長く細く光る緑の髪の毛が、薄い反射を返している。掲げ持つ三本の鉤爪が、器用にそれを揺らして見せた。
「彼の肩に付いていた、道を開いたのはこの人物だろう。長さからいって、恐らく女性」
「ふむ。では、これを採取する時にプローブを見られた、と」
「そんなヘマはしない。察知されないようしっかりと意識は逸らしたさ。迷彩も完璧なうえ、相手の死角からのアプローチ。気付かれる要素は無いのに、何故か気付かれた。失態だな」
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