第1章

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「こっちの地元では案外大丈夫だったんだよ! 『ソドム』では「それは危ないワード!」ばぁ!」 やり取りはそれなりに喧しかった筈なのに、見向きする生徒は一人もいない。これはこれで、寂しいものがある気がする。 とにもかくにも、思いきり力を込めて星純の口を塞ぎにくるリリーは、冷や汗とか焦点の合わない目付きとかで色々と訴えかけてくる。内容は焦りだったり、謝罪とかも。 けれど一番は、可哀想なものを見る、哀れんだ調子の双眸だ。割りと本気で━━当人が原因だから当たり前だけれど━━心配されているらしい。 何故こうなったか。まずは順に紐解いていこう。起点はもちろん、星純が乱発した「出世払い」という言葉。 出世したら払いに来るというスタンスの『ソドム』とは違い、こちらの世界での「出世払い」とは、「貴方の所で働くのオッケーですよ~~むしろお願いしますぅ(リリー談)」の意味と相成るわけで。早い話が、でっち奉公。 つまりこちらの場合は━━少なくとも『アルビオン』に於いては━━、代金の等価分を出世するまでの期間で賄え、という認識になる。自分から言った手前、そう簡単に関係を切り上げることも出来ず、概ねズルズルの状態まで長引くとか。
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