第1章

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業界用語で、これをヒルドーラと呼んだり呼ばなかったりします。そう療術院の前で解説するリリー。 ズルズルというか、それではドロドロじゃないかと思った。とはいえ、これじゃあ埒が開かないし、事態の解決にもならない。星純は意を決して、自分で申し込んだ「出世払い」を完済しに向かう。 までは良かった。 「そもそも何でおれの雇用権が色んな奴に譲渡されてんだよ……ただでさえ件数かさんでるのに…………」 「えぇっと。衣食住に必要最低限の物を購入した業者で4件、その後に彼等が商工会議所で金銭と交換し分割販売されて7件。うち、2件は買い戻したものの5件は売約済み」 「掛け持ちが5個ならそれでも良かった……だが街のなかで店はあっちこっちに点在してるし、そもそも場所わかんねーし、そもそものそもそも仕事のやり方が見当つかないし…………なんだ? ガジュマルソースの作り方って?」 「売約済みの業者から卸し売られてさらに分割、卸売り先でまた幾つかの小売りに分けられ転売され。それで結果、幾つになりましたか?」 「…………23件。一時間置き。ジジ牛の雄雌なんて区別つくかよ……てかジジ牛ってなんだよ…………」 ブラックであることは良い。勤務時間外労働だとか残業手当をどうこうするのは、別に構いやしない。バイトに稼業に裏仕事に、根詰めて睡眠時間を削るのは慣れてる。
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