第1章

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だから、野暮なことは言いっこなしだ。そう思って、星純はとりあえず視線だけリリーに寄越す。すると。 「ていっ」 何か塊を振り上げ、何を思ったか、突っ伏して標高の低くなった星純の後頭部へ振り降ろす。そんな真似をしたらどうなるか、結果は一目瞭然だ。 面食らった星純は特に反応も返さず、反射だけで鈍器を避ける。状況に感情が追い付かないから、振り切った塊が「魔法全史大全」とかいう極厚の書籍なのだと、妙に冷静な両目が読み取る。 「…………ハッ!? なにしてくれてんのアンタ! なにしてくれてんのアンタッ!!」 重い音を机に叩きつけ数秒、ようやく感情が理性に上ってきて、星純の困惑が怒声として現れる。おかげでというか、大事なことなので2回言った。 「何といっても……仕事の都合的に貴方を再起不能にすれば、ほら? 必然的にですね…………」 「そんなアグレッシブ求めてねーから! 仕事どころか人生すら再起不能だからそれ! 実力行使にも程があんだろ!?」 「失敬な! 程を考えたうえでのこれです!」 「考えたうえで!? あたま沸いてんの!?」 「アハハハハハ、ウフフフフフフ、アハハハハハ……」 「否定しろよッ!!」 なんで逆に心配してるんだっけ。 星純は、今までと別の理由で頭を抱えたくなる。
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