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「拒否権は無いのよ。お分かり?」
「アニキーーーー!!!」
そして混迷は極まった。もう何度目かのキャパシティオーバーを前に。
「どうも御早うございま」
席を立つ、歩み寄る、アッパーカット。
綺麗に振り抜かれた右拳。
「」
言葉を無くした赤いアホ毛。感激のあまり宙を二回転半して教室の向こう側へ。ついでに、鼻血があとを引いた様子。あくまで、“感激のあまりに”だ。
そうして、流石に押し黙った教室も見ず、星純は席に戻る。飛ばされた当人、ナッシュベルは床に激突した衝撃で━━きっとそれ以前に失っていただろうけど━━気絶したようだ。
まあ、うん。元々どうでも良かったし。これで良かった、ああ、良かったんだ。
そう考えるだけ、何事もなく着席する星純は、沈黙を守ったままそっと両手で顔を覆う。世の中すべてを拒絶しようかと、何か歴然とした決意を滲ませ。
「もう、さ……ちょっと黙れ」
決意、というよりは、哀願かも。取り合えず状況をリセットしたい、そういう心の叫びだと思って頂ければ幸いだ。
「…………」ポンッ
「リリー…………お前にその権利は無い」
見えてはいない。見えてはいないけど、この肩に置かれた手はリリーに違いない。ので、この時の彼女の表情がどうなっているのか。
考えたくない。星純はため息もつけなかった。
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