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「おらお前ら、ちゃっちゃと席ィ着けやゴラ」
と、星純が自身の闇に辟易してたころ。
すり鉢教室の前面。前方にある扉から人影がひとつ現れる。
まったく、このあたりは━━至極当然だけれど━━学校然としていやがる。スラムじゃあ青空教室なんて体で、どこか学会から追放された教授が、その引き戸の効果音で授業を開始してたものだ。
あの時の教授は元気だろうか。今でも思い出す。無精髭にくたびれたワイシャツ姿が懐かしい。
で、何故いま思い出したのだろうか。もちろん、唐突に思い出すこともある。けれど、今回はその限りじゃない。
「んじゃあよ、まずは挨拶な。俺ァ、テメェらのクラスを担当する〈セント・マリア〉教員、ウェイド=スプリングスだ。取り合えず、夜露死苦」
それを見たことはある。けれど、彼等はすでに化石みたいなものだった筈だ。『ソドム』が成立するよりも、ずっと前から。
だから一瞬、端目で見えた程度のもので、希少の度合いは随分なもので。腹にさらしを巻いて、始終たばこをーーいや、あれは高楊枝か。
━━白い、改造された服飾。特攻服だったか。手には木刀……ああ、そこも同じなんだ。
そして、なによりリーゼント。しっかり前方へせりだした茶髪のリーゼント。
そう、リーゼント。
「なんでいきなりヤンキーが出てんだよ!?」
「うっせえ」
星純が━━自分でも後悔するほど━━情けなく声を張り上げる。そのコンマ数秒後、一条の白線を描きチョークが飛んで来たのは、ある意味で流石だ。
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