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教師ウェイドは、その様子に気付かず話を続ける。
「まずテメェらは、これから現時点での実力を査定されるワケだ。まぁ、この学院自体これからのテメェらを規定する場所だし、それくらいは覚悟のうえだと思う」
ひとりでに走るチョーク。幾つかの文章を吐き出しながら、するすると深緑の表面を滑る。
相も変わらず、星純の見覚えがない文字で。しかしながら、その言語の読み方には身に覚えがある。
感覚のはなし、身体が覚えているようだ。まったく、バツが悪い。認識と無意識の乖離した有り様は、不可思議というよりひどく不気味だ。
「で、だ。学院の主催で執り行われる新入生クラス選抜実技試験が一月後に控えてる。まぁ、試験とは名ばかりのドつき合いだが、近々では一番でかい大会だ。関係各位には良いデモンストレーションになるだろうな」
チョークの走査が加速して、今度は幾つかの図形を吐き出し始めた。四角か円か、それらを適度な位置に配しては、予め書かれた文章を囲むよう描かれる。
図形の規格もバラバラだから、文字の大きさも統一されない。けれど文章はというと、『騎士団』だの『王国軍』だの『研究所』だの、その他色々。
なんとまあ、物騒な単語が並んでいて、どうにも雰囲気が穏当でない。正式に殴り合い宣言が出されているし、教師の見てくれがあれなら無理もないのだろうけど。
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