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またも、慣性に持っていかれる脳みそ。痛いで済んだのは幸いか。
「質問があれば挙手しろ。遠慮はいらん。だがまさか、“女王陛下”の御前にて行われる試合について、質問なんて無いよな?」
「…………はい」
素直に従う星純。自分を主張し過ぎるのは円滑な人間関係がうんたらかんたらと、ある疲れたサラリーマンが言っていた。
社会人にも色々あるらしい。が、取り合えずはまたひとつ、大人の階段を登ってしまった星純である。
正直、その為にチョークの二連発はいらない気もするが。とにかく、円満な場を乱さない処世術を身に付けた。レベルアップ完了。
すると。
「ウェイド教員」
すらり、右手が上がった。星純が最後方に居るから顔は見えないが、しかし声に聞き覚えがある。
男の声、すり鉢に沿って弧を描く机の、何段か前の席から。そこに見てとれる、砂色のオールバック。
「大会の概要を詳しく伺いたい。どういった形式の試合なのか、参加人数の詳細も」
冷静な言い様だが、妙にキザっぽい。ああ多分、間違いない筈。
同じクラスなのだと今知った。ギルバート・S=グランが、整然とした佇まいでそこに居る。
教員は顎で生徒を指し。
「出るつもりか?」
「一応は」
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