第1章

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「ははん。流石はグラン家、血筋だな。テメェの「姉貴」も、話を聞いたときは同じ目付きをしてた」 「…………」 そういう、複雑さを醸し出すのはやめて貰いたい。話がややこしくなる。 もちろん思っただけ、口には出さない。ウェイド教師は沈黙をただ受け取り、視線をギルバートから教室の全員に向ける。 「開催は今日からきっかり一ヶ月後。いまは第4ルナ3番目の日付だから、大会日は第5ルナの同日となる。場所はここ、学院だ。参加人数に規定は無いが、各クラスからの代表者ないし代表グループによってこれを競う。しかも同時に、一斉に」 バトル・ロワイアル、というヤツだ。軽く、愉快そうな調子で言ったところで、それの野蛮さは微塵も無くならない。 人数に上限の無い喧嘩を、衆人環視の限られたスペースで執り行うこと。しかもそれぞれ、許された暴力の範疇に魔法が付与される。 それだけでも最悪の親戚だ。最低限、命の安全くらいはあるのだろうけど、それさえないと『ソドム』の金網デスマッチと同じになる。 「名を上げたいのなら、コイツァかなりオススメだ。将来の“近衛”を狙うなら是非とも奮って参加しやがれ。他に質問は?」 星純にとり、まったく以て質問しかないのだけれど、さっきみたいなチョーク攻撃は勘弁ねがいたい。ので、今回もまた何も言わず。 ギルバートも満足したのだろう。沈黙を保ったまま、話の内容を咀嚼するように背もたれへ身を預ける。
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