51人が本棚に入れています
本棚に追加
/614ページ
「……そんなこと、わかって」
「分かっているようには見えないね」
「な、なら諦めろってこと?」
「選択肢のひとつだね」
「まだ、まだ生きてるかもしれない、ガレキに埋もれて動けないのかも……」
「そんな程度の問題を、彼が解決できないと思うのかい?」
「じゃあ……! じゃあもう、兄ちゃんの事は忘れろってのか!? オイラ達の恩人だぞッ!」
「何時までも居ない人間に思い煩わされるのは、ちょっと健全ではないという話だよ。特に、君らみたいな年端のいかない子供はね」
「こ……のォ!」
「はっちゃん!」
怒りに我を忘れる、そうまでされて黙っていることは出来ない。ミツは、それを察した。
「…………もう、帰ろうよ」
帰ろう。ミツは言う。身体中が包帯まみれのままで、切実に。
正真の涙声で、だ。けれど、いまの状態も、状況もすべてひっくり返せば、それはこういう意味になる。
最初のコメントを投稿しよう!