第2章

4/53
前へ
/614ページ
次へ
「完全な意味で、そうとは言えませんがね。簡単にヒト様の心は変わりませんよ」 「…………じゃあ何だ。80年も経った現在だろうと、やっぱ怨恨は残っていると、そういうことか」 星純はそう結論付ける。リリーは困ったように眉根を潜め、小さく首肯した。 なるほど、理解した。星純は傍らの石壁に身をもたれる。まったく、問題の根は厄介だ。 「お教えした通り、ヒトの心は複雑で、結局分からないものなのです。世界的な大戦として銘打たれた彼の戦争から、どの国も人々も立ち直ろうと必死で。焼け野原から立ち上がるには依って立つ何かが必要なんですよ……良い意味でも、悪い意味でも」 それは、とてもよく分かる。けれどそうして『ソドム』を思い出すと、真っ先に思い浮かぶのがガキ共のこととは、嫌になる因果だ。 全ての意味で依って立つ物が無かったから、ああして拾い上げたというのに。どいつもこいつも死んだ目付きで、まるで最初から生きてすらいないように、何事かにすがり付く。 しかも得てして、頼る対象は下衆揃い。組織の鉄砲玉が一番マシな待遇と、宣いやがった人身売買ブローカーを川に流した事は別の話か。勿論、ボコボコにして。
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加