その1.新谷誠ーニイヤマコトー

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ーーーーーーーーーーーーー そして今… 歯切れの悪い返事をした俺は耐えきれなくなり病室を飛び出しこうして病院の外でずっと頭を抱えている。 どうすればいいんだ… もう何度目かもわからない自問自答。 己の無力さにイライラだけが募っていく。 妻はもう産むことを決意していた。 いい夫なら一緒に頑張ろうとか言って抱きしめてやれるんだろう。 しかしあろうことか俺は妻と全く逆のことを考えてしまっていた。 妻の、恵美のいない生活なんて考えられない。 もし子どもを産んで死んでしまうぐらいならいっそ産んでくれなくていい… そんな最悪なことを考えてしまった。 「俺は、既に父親失格だな…」 そう言って自嘲気味に笑った。 その時だった。 「どうしたのかい?」 突然誰かから声を掛けられた。 声のした方を見るとそこには優しそうな婆さんが立っていた。 足が悪いのか杖をついて穏やかな笑みを浮かべている。 あぁ、昔死んじゃった俺のお婆ちゃんにそっくりだ。そんなことを考えていた。 「何か嫌なことでもあったのかい?若い人がこんなベンチでたそがれてちゃいけないよ」 優しい声で婆さんは語りかけてくる。
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