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正直言うと今誰かと話している気分ではなかったがここで冷たくあしらうのは気が引ける。
「ええ、少し辛いことがあって…」
そう言って俺は再び婆さんに目を向ける。
婆さんは穏やかな笑みを浮かべたままだ。
「少し、お話ししていいかい?」
そう言って婆さんは俺の隣に目をやる。
俺は「どうぞ」と言って手で隣を差した。
婆さんはよっこいしょ、と言いながら俺の隣に腰掛ける。
何故だろうか…あんなに人と話したくない気分だったのにこの婆さんの姿を見ていると全てを聞いて欲しいとさえ思っていた。
懐かしいな…小学校の頃もこうしてよくおばあちゃんに話を聞いてもらってたな。
学校で起こったこととか友達と遊んだこととか…
おばあちゃんはいつもうんうん頷いて聞いてくれていたな。
優しくて大好きだったおばあちゃん。
そんなおばあちゃんとこの婆さんの姿を重ねてしまっているのだろう。
「実は……」
気がつけば俺は話し始めていた。
もしかすると言葉も支離滅裂だったかもしれない。
頭も真っ白で考えもまとまらないままでとにかく全てを吐き出していた。
「そうだったんだね…」
婆さんはまるで自分のことのように辛そうな顔をして呟いた。
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