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「俺は…妻になんて言ってあげればいいんですか?どんな顔をしてればいいんですか?……とにかくこんな自分が情けないんです…」
思わず涙が溢れていた。
自分でも驚くぐらいの大粒の涙。もういい大人なのに恥ずかしいぐらいに泣いてしまっていた。
そんな俺の背中を優しくさすり婆さんは言う。
「いっぱい泣いていいんだよ。私の前や1人の時はたくさん泣きなさい。
でもね、奥さんの前では泣いちゃいけないよ。これからあなたの奥さんはあなたよりたぁーくさん辛い思いをしなくちゃいけないの。
そんな時にあなたまで泣いていたら不安になっちゃうでしょ。だからあなたはどっしり構えてないと。男の子でしょ」
婆さんの一言一言が胸に突き刺さりさらに涙が溢れ出してくる。
「奥さんはもう戦う覚悟をしてるんだよ。夫ならその背中をしっかり押してあげないと」
そうだ…俺は恵美の夫なんだ。俺が狼狽えててどうする…俺にできることなんて一つしかないじゃないか!
「お婆さん、ありがとうございます…俺、ちょっと妻のところへ行ってきます!」
そう言って俺はベンチから立ち上がる。
「ええ、行っておいで。何か辛いことがあったらまたお話しにおいで。私もしばらくこの病院にいるから」
俺は涙を拭いて婆さんにお辞儀をする。
そして妻の病室へと駆けた。
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