その1.新谷誠ーニイヤマコトー

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「俺は…妻になんて言ってあげればいいんですか?どんな顔をしてればいいんですか?……とにかくこんな自分が情けないんです…」 思わず涙が溢れていた。 自分でも驚くぐらいの大粒の涙。もういい大人なのに恥ずかしいぐらいに泣いてしまっていた。 そんな俺の背中を優しくさすり婆さんは言う。 「いっぱい泣いていいんだよ。私の前や1人の時はたくさん泣きなさい。 でもね、奥さんの前では泣いちゃいけないよ。これからあなたの奥さんはあなたよりたぁーくさん辛い思いをしなくちゃいけないの。 そんな時にあなたまで泣いていたら不安になっちゃうでしょ。だからあなたはどっしり構えてないと。男の子でしょ」 婆さんの一言一言が胸に突き刺さりさらに涙が溢れ出してくる。 「奥さんはもう戦う覚悟をしてるんだよ。夫ならその背中をしっかり押してあげないと」 そうだ…俺は恵美の夫なんだ。俺が狼狽えててどうする…俺にできることなんて一つしかないじゃないか! 「お婆さん、ありがとうございます…俺、ちょっと妻のところへ行ってきます!」 そう言って俺はベンチから立ち上がる。 「ええ、行っておいで。何か辛いことがあったらまたお話しにおいで。私もしばらくこの病院にいるから」 俺は涙を拭いて婆さんにお辞儀をする。 そして妻の病室へと駆けた。
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