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第一話
「似ている、とは?」
茶を飲もうとしていた八坂蒼士(やさかそうし)は、父の言葉にその手を止めた。
「姿形が……それはそれは、お前によっく似ているよ」
父はそう答え、目を細める。
八坂蒼士はこの日、非番だった。
普段なら役宅の長屋でのんびりと読書をするか、小料理屋『柳屋』主人である伊織(いおり)の元へ読物を借りに外へ出る。
ところが、ここ数ヶ月、実家である診療所へと顔を出していないことに気付いた。
これはいかんと、八坂は半ば慌てて観月屋名物『ゆきんこ饅頭』の箱を携えて訪れたのだ。
「髪の色はお前より少し明るいかな。でも、気にはならんさ。それよりも、その顔の形から体の作りまで、細かいところが似ていることの方が驚きでね。口入れ屋から引き合わせてもらった時は何の冗談かと我が目を疑ったようなものだが……」
口入れ屋とは、今日で言うところの派遣会社のようなところである。
職業を斡旋するのは勿論のこと、時には縁談の世話をすることもあるそう。
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