第一話

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 熱心に働くというより、無理して働き詰めているようにも見えたので、八坂父は心配して数日の暇を出したそうだ。  何より、彼の叔父の具合がどうも良くないらしい。  余計に心配になるのが医者としての性(さが)というもの。 「それはまた……ここへ引き取るというのはいかがでしょう?」 「私も勧めはしたのだが、頑なに首を横に振られてね。彼はもう家族同然なのだから、遠慮なく甘えて欲しかったのだが……」  残念そうに息を長く吐いた。 「無理強いするわけにもいくまいて」 「そうですね」  それきり、二人は黙ったまま茶を飲んだ。 「そろそろ戻ります」  八坂蒼士は立ち上がると、花守乃舞波割(はなのまい・なみわり)二尺三寸(約七十センチ)を帯へと差す。 「もう行くのか」  名残惜しげな父に、息子は返事の代わりに微笑んだ。  そして、彼は縁側で草履(ぞうり)を履くと、裏口へと向かって行くのだった。
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