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「私に似た男……気になりますね」
八坂は口の中で呟いた。
「いや、驚いたな……」
神倉が驚いたのはそれだけではないらしい。
すれ違った八坂というのは、こざっぱりとした町人の風体をしていたのだそうな。
しかし、目の前に立っている部下の八坂は、彼もまた浅めの編笠に着流しである。
「やはり、あれは俺の見間違いだろうか」
「いえ、神倉様。見間違いではございません」
「それでは、お前の変装……。では、ないようだな。何を知っている?」
八坂の表情に、神倉が怪訝そうな顔になる。
「とりあえず、中へ入りませんか」
そう促し、二人は役宅の門を潜った。
神倉は市中見廻りの報告をする為、長官である玉置(たまき)の部屋へ行かねばならない。
「私もご一緒致します」
その神倉に八坂が続く。
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