清水先生の場合

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「清水先生、また身長伸びました? 何か目線が」 「え、あら、やだ。分かっちゃいます? あまり気付かれないように低めのパンプスにしたんですけど」  浅田先生の言うように、最近三センチも身長が伸びていて、実は密かに悩んでいたりする。あんまり身長が伸びるのは嬉しくないんだけど。  男と並んでもあまり身長差がない自分の背丈を思うと自然と溜息が漏れる。 「でも羨ましいですよ、同じ男として」 「ちょっ、あまり外で言わないでっ!」 「あ、すみません!」  はあ。違う意味でも溜息つきたくなっちゃいそう。  彼の言う通り、私は男。女性の格好をしているのは完全に趣味。幸い顔立ちや声のトーンも男よりは女性に近かった私は、昔から男にからかわれてきたにも拘わらず、女の子の格好をするのが好きだった。  別に男の格好をするのが嫌いってわけじゃない。ただ、自分から見て、何となく自分の顔立ちで男のシンプルな服装は似合わないんじゃないか、と思っているだけ。  だから人と会う外では基本的に女性の格好をして、誰とも会わない家では男の格好をしている。
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