プロローグ

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世界を滅ぼす事象存在の覚醒が確定され、同時期にそれの封印方法が発見された。民衆は絶望から希望の光に顔を綻ばせていたが、その微笑みを殴りつけて絶望に追い込んだ男がいた。 正気を疑われる行動だ。しかし、当の本人は「お前らこそ正気か」と吐き捨てて、世界を滅ぼす事象存在。 あるいは地球(ほし)における自業自得のアポトーシス(自滅因子)であるところの通称アポステルを封印する因子を保有する神子を誘拐したのだ。 特戦軍と呼ばれる名前だけの軍隊の長であり、日本の保有する称号持ちの1人でもある男の反逆は日本を震撼させるどころか、他の大国の人々までもが、その身を震えさせて絶望に打ち震えるのに充分な事象であった。 まさに世界を震撼させた彼の称号は極めて悪辣な性質と、今回起こした事件により「魔王」と呼ばれることになる。 そんな彼は今。 「朝だぞー、ほれ起きろ」 「やー、あと30分」 「お前リアルな数字持ち出してくんなよ、そこは形式美的にあと5分だろ」 ガッツリ寝る気満々じゃないかと呆れた表情で、ベッドに寝転んだ10歳くらいの少女の頬をつついている。最低最悪とまで世間で噂され、世界を恐怖と混乱に陥れた「魔王」こと黒崎光は他のことなど知らぬとばかりに普通に暮らしていた。 人類の絶滅、つまるところアポステル復活まで残り1年をきった現在、皮肉なことに彼だけが日常を謳歌している事実は誰も知らないだろう。 彼の目の前で眠っている神子以外は。 「あむ」 「いった!お前指噛むな!痛い痛い痛い、まじで痛い、ちょっ、おまやめろ!!」 彼らの日常は平穏である。
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