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称号なんてものを神々は人間に与えるようになった。この世界に神々が愛していない人間はおらず、だから称号を与えられたと言うことは依怙贔屓ではない。
ただ、その人の人生において必要になるから慈悲深い彼らは与えるのだ。
あるものは力を得た。しかし、その力を持って戦い続けた結果、大切なものをすべて取り零した。
あるものは頭脳を得た。しかし、最後まで自らの本当に知りたいことを得ることはついぞなかった。
あるものは未来を見る力を得た。しかし、来るべき未来に絶望して、その目を自ら抉り出した。
強大な恩恵は運命に抗う力だ。その称号が強大であればある程に、降りかかる災厄もまた大きいと言うこと。
ならば「神子」と呼ばれる称号を得た子供が、世界を滅ぼす存在と対峙せざるを得なくなったのはやはり必然で。
「魔王」と呼ばれる称号を得た彼が、理由は兎も角、世界すべての人間を敵としたのもまた必然であったのだろう。
慈悲深い神々は選択肢を与える。そして選んだ解を尊重する。例えそれが終末であろうとも、その選択をこそ神々は愛し、慈しむ。
称号とは選択肢だ。理不尽を前にしては矮小な人間は、選択することすらできないから、慈悲深き彼らは力を与える。
幸福な終わりではないかも知れない、しかし、せめて納得のいく終わりであって欲しいと。
願うのだろう。
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