The We Land

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寝起きのような気分。だが、僕は立っていた。いつから立っていたのかはわからないが、まるで目覚めたばかりのようだ。 ここは僕の家。父子家庭の長男である僕は台所から庭を見ていた。庭には種類も知らない色んな木や雑草が生え、その向こうに塀、さらに向こうに隣の家。その境目に蔓が人工的な網状をつくっている。 僕はなにもない記憶を辿る。ただ辿るだけで、そこに記憶そのものはない。が、プログラムされていたように脳に設定されたものならある。同年代の女性1人と男性4人の姿で、なぜ同年代だとわかるのかは知らないが、そう設定されている。どうやら僕はこの家に閉じ込められてるようだ。 ふと、台所の端に僕がいた。というより、僕と同じ姿のなにか。自分の姿を見たことはないが、設定があるからわかる。記憶ではなく、設定。栗色の髪は天パで前髪が目元まで延びた白人、真っ黒な瞳がこっちを見る。そいつは白いカッターシャツに白いズボンを履いていた。ゆっくり僕に近づき、にんまり笑いながら僕の首を絞める。苦しくはない。 「なんだお前」 首を絞められてるわりに僕は普通に喋ることができたが、何語を話してるかはわからない。そいつは首を絞めるのをやめると、僕の左頬を殴ってきた。僕はそのまま殺風景なリビングへ倒れこみ、直ぐに立って逃げる。本能ではなく、逃げるように設定されていた。だから走って家のリビング、廊下、台所をぐるぐる回った。そいつは僕が1周するたびに1体増え、皆包丁を手にしている。怖い、この感情は設定ではないだろう。 僕は台所の消火器を取ると、安全装置を外して追っかけてくる"僕達"に向けて白い粉を噴射した。そいつらはピタリと足を止め、僕はそいつを消火器でボコボコにする。なるべく頭を狙った。白い粉に赤が混じり、気づけば僕の死体が沢山転がっていた。 「滑稽だな」 ふと口から出た。これも設定ではない。
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