第二章  凶行

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 監視カメラの映像が確認されたが、走行中の車両から投げ捨てられた物と思われた。それ以上は不明。  多くの捜査員が導入される事態。世間の動揺に配慮して、新しく届いたアニメ動画の公表は控えられた。  新たな童画は、内容の過激さが問題だった。  黒猫の女性検察官が裁判所から誘拐され、死体が公園のジャングルジムに括り付けられている画像で終わっている。  今回も、性的暴行を示唆する内容。誘拐犯はジャッカル群れで、ナレーションは狼男が登場する。  今回は刺殺を仄めかせていた。  凶行はエスカレートするものと思われ、警視庁捜査班の警戒が厳重になる。そして検事の平瀬も動いた。  彼の独自の伝手から、直属の部下である二宮環検事の警護を警備会社のガードシステムに依頼したのだ。  そこには、二か月程前の河村光子の事件に対する衝撃と反省が、大きく作用していた。 「河村君の現状を知る者として、とても黙って見ては居られない。自分の部下の安全は確保したいんだよ」、強い口調で上層部の反対を押し切った。  彼は費用も自分が支払うと主張して押し通した。  検察庁と警視庁捜査班を強引に説得したので、当然ながら地検の中では二宮環との男女関係が取り沙汰された。  様々な憶測が乱れ飛ぶ中、このごり押しの成功には広瀬検事の家系がものをいった。  検察と警察に奉職して来た彼の一族は、警察本部にも多くの親戚や知人を持っている。 彼自身もまた、その将来を嘱望されており、強い影響力を保持している。甘く見れない男だ。  広瀬検事の一族を敵に回したくない上層部は、渋々黙認した。 のみならず、依頼先の警備保障会社の名前も上層部の判断に大きく影響した。  広瀬検事の従兄が経営しているTD警備保障は、警察官の優良な再就職先。身内も同然と言っても過言では無い程の退職者を雇用している。  その新設されたガードシステムは、最近の凶悪化しているストーカー被害に目を付けたオーナー社長の藤堂高彬がSP出身者や捜査一課と所轄署の凶行班係の退職者・元自衛官等を揃えて設立したもので、現在ではそうとう評判になっている。  警察の良き協力者と視られているばかりか、過去にも捜査協力の依頼を積極的に受け入れた経緯がある。
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