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でも本当に怒らせたのは、翌年の結婚記念日だった。
大学院に進学した私は、将来の夢に真剣だった。
司法試験の合格を目指していた私に、高彬が言い渡したのだ。
「僕の従弟も検事をしているから色々と聞いている。君は僕の妻だ。結婚生活をもっと真剣に考えてくれ」
とても苛立っていたらしく、可成り険悪な口調だった。
「君が検事になれたとして。僕は、いつ君を抱いて子供を作るんだ」
そこで、言ってはならない事を言ってしまった馬鹿な私。
「私は子供を作るための道具じゃ無いし、貴方の欲望を満たす為のお人形さんじゃないわ」
これが決定的だった。
この直後から、高彬の女遊びは再発した。
結婚前の彼は、派手な女遊びで有名だった。
人から聞いていたけれど、それでもこの記念日までは静かだったのに。
これまでも女遊びはあったのかも知れないけど、「私の耳に入って来る程に表立っては、何も無かった」、と思う。
高彬に放置される様になって、寂しかったし辛かった。
彼に恋している自分にやっと気付いて、哀しくて、泣いた私。
涙もろくなって・・・本気で高彬に抱いて欲しいと思った。
あの別荘での事が起こる四か月程前だ。夜遅くに疲れた様子で、酔って帰って来た高彬をベッドに連れて行って、眠るまでマッサージをした。もちろん下心があったのだ。
すっかり眠りこけている彼を裸にして、私も全てを脱ぎ捨てた。彼に寄り添って一緒に裸で寝たわたし。
子供だった私の、必死の可愛い作戦。
今から考えれば、三十七歳にもなっていた高彬が、そんな事で騙される筈が無い。
翌朝の彼の愛の行為は、何もかも承知の上での事だったのだろう。
でも嬉しかった。
夢中で愛した。
そして、「夢は捨てても良いとまで思い詰めて」・・本当に可愛かった私・・
それからの一ヶ月は、ずっと彼に抱かれて眠った。
私は幸せだったから、つい自分に起きている身体の変化を見逃してしまった。
今でも後悔する事があるとしたら、あの時の自分の幼さだろうか。
一カ月ほどした、ある夜の事だった。
「進路をはっきり決めて欲しい」
高彬に迫られて、その場でハッキリと答えられなかった私。
少しはまだ、夢に迷いがあったのだ。
「もういい!」
「君は自分の望みを叶えればいいだろう。僕は二度とは、君に歩み寄ったりはしない。勝手にすればいいさ」
その夜、邸を出て行って戻っては来なかった彼。
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