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第五章 続く凶行
辣腕の実業家は、頻発するストーカー被害に目を付けた。
警察の手が届かない闇。
そのために設立した新しい部署。それが藤堂高彬が率いる、TD警備保障のガードシステムだった。
あらゆる分野から経験豊富な人材を集めたそこは、一種の異能集団だ。
そして今。二宮環の警護を請け負うその集団を煙たく思う捜査本部との間に、軋轢が生じ始めている。
「緩衝剤が必要だ」、広瀬検事がうめいた。
東京地検を呑み込んでうごめく黒い闇は、徐々にその凶行をエスカレートさせている。
捜査は振り出しに戻り、魔の手が再び環に迫ろうとしていた。
その二宮環。幼くして母を交通事故で失い、父はやがて再婚した。その結婚は二宮弁護士に妻をもたらしはしたが、環に母を与えてはくれなかった。「仲の良い、お友達のように暮らしましょうね」、彼女はいつもそう言う。
十年前のあの辛い日々。支えてくれたのは高彬の父と母!暖かな両親の温もりを初めて知った日々だった。
今も心に残る温もり・・
高彬の愛を再び受け入れたのも、もしかしたらあの温もりの日々に魅かれているからかも知れない・・環は、ふとそう思う・・
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