愛する娘へ

2/2
前へ
/2ページ
次へ
愛する娘へ あなたがこの手紙を見つけた時、私はもうこの世には居ないのでしょうね。 長い闘病生活のせいか、文字を書く手が震えます。みっともない字で、ごめんなさいね。 お父さんの事、恨んでいるでしょうね。 あなたから見たら、お父さんは自己中心的で、自分勝手で、暴君そのものだったでしょう。 でも、お父さんは優しい人なの。 お祖父様達が遺してくれた財産を全て治療費につぎ込もうとしたお父さんに、「やめて」とお願いしたのは私です。 お母さんは、お父さんが大好きでした。 一生懸命たくさんの作品を作り出し、嬉しそうに私に見せてくれる少年のような瞳のあの人が好きでした。 あの人の瞳が曇るのを見たくなかった。 お父さんには内緒にしてくださいね。 実は、お父さんは毎晩病室に来てくれるの。そして、私が寝付くまでずっと手を繋いでくれてるの。 私はいつも寝たふりをするの。だって、そうしないとお父さんが泣けないでしょ? 私がお父さんの事を好きなように、お父さんも、私の事を愛してくれました。 あなたとお父さんは似た者親子だから、お母さんは心配です。だって、2人とも不器用だから。 最後に、お母さんからお願いです。 どうか。 どうか2人とも、お母さんが居なくても笑顔を忘れないでください。 あなたも、お父さんも。 愛しています。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加