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優香は、俺と直接話がしたいと言っていたし、ジェイクの写真も送ってくれた。そもそも、彼女は住所も名前も公表しているのに、俺だけ名前を明かさないのは不公平だ。
彼女に、会ってみようと、話をしてみよう。
俺は、ボールペンを握りしめた。
・ ・ ・
”可愛い犬だね、ちょっとごついけど、人懐っこそうだ。
俺も会ってみたいな。
あ、ジェイクのことだけじゃないぞ。
優香にも、会ってみたい。
もし無理だったら、文通だけでも大丈夫だから。
それはそうと、写真貰うだけじゃ悪いから、昨日の猫の集会、もう一回行って写真に収めてきた。
ちょっと面白いから見てみて。
文通相手こと、重田光(しげた・ひかる)”
・ ・ ・
なんて書いてみたが、警戒されないかが心配だ。
一応身分証明の為に住所も書いてみたが、彼女はともかく、親御さんがどう思うか分かったもんじゃない。
後々後悔したが、もう手紙はポストの中。もう今更何を思っても遅いだろう。
俺は学校へと急いだ。
・ ・ ・
俺が彼女と文通をする一方、玲子との連絡は断ち、玲子が来ても即座に返すようにしていた。
していた、はずなのだが――。
「何よアイツ、この私に目もくれないなんて。手紙なんか書いちゃって、ばっかじゃないの……」
・ ・ ・
「……何だよ、コレ」
帰宅後、俺は目の前の光景を疑った。
テーブルの上に置いてあったはずの八通目の手紙が、ビリビリに破り捨てられていたのだ。
俺の家に入られる人間と言えば……。
「そうだ、玲子に合鍵返してもらって無かった」
くそっ! と、思わずテーブルを叩いた。すると、テーブルの上に乗っていた破かれた手紙の一部が絨毯に落ちる。
これだけ細かく破かれると、返事が全く読めないな。……仕方あるまい。
玲子に破られたとは言いたく無かったので、親戚のいとこに破られたと言うことにして、手紙には、「申し訳無いが、もう一度返事を書いて欲しい」と書いて、今回は日をまたぐ前に手紙を出した。
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