五通

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”おはよう。今日は雨らしいよ。  今日はバイトだけだけど、ちょっと怠くなっちまうな。  ところで、学校へあまり行けないって、何か事情があるのかな?  話したくなければ良いけれど、何でも話せる仲って言ってたから。  もし良ければ、愚痴くらいは聞くよ。  ちなみに俺の愚痴は、専門学校の教師がやたらと俺のことばかり指さすことかな。文通相手”  ・ ・ ・  今回は、思い切って、彼女のことについて聞いてみることにした。  だって、何でも話し合える仲になりたいって、本人が言っていたのだから。  きっと、彼女も俺の気持ちに応えてくれるはずだろう。  土砂降りの中、ポストに手紙を投函し、俺は学校へと急いだ。  ・ ・ ・ ”おはようございます。ええ本当に。すごい雨ですね。  文通相手様、今日もお疲れ様です。  そして、この雨の日にも届けて下さり、本当に有難うございます。  私にとっての今一番の楽しみなので、とっても嬉しいです。  学校へ行けないのには、ご察しの通り理由があります。  私は、もともと体が弱いのです。  だから、学校へ行きたくてもいけない。  家にいるばかりで、ベッドで眠る退屈な日々ばかり。  何も出来ることは無い。  これが、私のちょっとした愚痴です。  ですから、文通相手様が学生さんなのは驚きと同時に、嬉しくも感じました。  だから、これからもどんどん愚痴って下さい。  貴方の生活を通して、私も共に生活を送っているかのような、そんな感覚を抱きたいと思っているのです。  明日も手紙、楽しみにしております。  でも、無理しないでね。今多優香”  ・ ・ ・  やはり、彼女にはただならぬ事情があったようだ。  だとすれば、やっぱりふざけた文章なんて書かずに、真剣に書いた方が良さそうだな。  俺の生活を通して、か。じゃあ、今までみたいに、だらけた生活ばかりをしていては駄目だよな。それと、あっちも……。  などと考えていると、マンションのチャイムが鳴った。ピザは頼んでいないし、宅配物を注文した記憶も無いのだが、他に何かあっただろうか?  扉を開けると、そこには予想だにしない人物が目の前にいた。 「久しぶりっ」 「……玲子(れいこ)」  目の前にいたのは、元カノの藤谷玲子(ふじたに・れいこ)だった。
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