6人が本棚に入れています
本棚に追加
”おはよう。今日は雨らしいよ。
今日はバイトだけだけど、ちょっと怠くなっちまうな。
ところで、学校へあまり行けないって、何か事情があるのかな?
話したくなければ良いけれど、何でも話せる仲って言ってたから。
もし良ければ、愚痴くらいは聞くよ。
ちなみに俺の愚痴は、専門学校の教師がやたらと俺のことばかり指さすことかな。文通相手”
・ ・ ・
今回は、思い切って、彼女のことについて聞いてみることにした。
だって、何でも話し合える仲になりたいって、本人が言っていたのだから。
きっと、彼女も俺の気持ちに応えてくれるはずだろう。
土砂降りの中、ポストに手紙を投函し、俺は学校へと急いだ。
・ ・ ・
”おはようございます。ええ本当に。すごい雨ですね。
文通相手様、今日もお疲れ様です。
そして、この雨の日にも届けて下さり、本当に有難うございます。
私にとっての今一番の楽しみなので、とっても嬉しいです。
学校へ行けないのには、ご察しの通り理由があります。
私は、もともと体が弱いのです。
だから、学校へ行きたくてもいけない。
家にいるばかりで、ベッドで眠る退屈な日々ばかり。
何も出来ることは無い。
これが、私のちょっとした愚痴です。
ですから、文通相手様が学生さんなのは驚きと同時に、嬉しくも感じました。
だから、これからもどんどん愚痴って下さい。
貴方の生活を通して、私も共に生活を送っているかのような、そんな感覚を抱きたいと思っているのです。
明日も手紙、楽しみにしております。
でも、無理しないでね。今多優香”
・ ・ ・
やはり、彼女にはただならぬ事情があったようだ。
だとすれば、やっぱりふざけた文章なんて書かずに、真剣に書いた方が良さそうだな。
俺の生活を通して、か。じゃあ、今までみたいに、だらけた生活ばかりをしていては駄目だよな。それと、あっちも……。
などと考えていると、マンションのチャイムが鳴った。ピザは頼んでいないし、宅配物を注文した記憶も無いのだが、他に何かあっただろうか?
扉を開けると、そこには予想だにしない人物が目の前にいた。
「久しぶりっ」
「……玲子(れいこ)」
目の前にいたのは、元カノの藤谷玲子(ふじたに・れいこ)だった。
最初のコメントを投稿しよう!