六通

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「……玲子。何だよ、もうお前とは別れるって言ったはずだが」 「そんなカタいこと言わないでよぉ。私と貴方のナ・カ・で・しょ?」  玲子はそう言うと、俺の手首を掴み、ベッドへと歩いて行った。こいつの考えていることなんて一つしかない。俺は強引に手を振りほどくと、逆に玲子の手首を掴み、玲子を出口へと連れていく。 「帰れ」 「いやだ」  首を振る玲子。 「あのなぁ」  額に手を当ててため息をついたその直後のことだった。  急に唇に柔らかい感触がしたかと思えば、彼女の唇が触れていたのだ。  俺は驚いたものの、彼女に両手首を掴まれると、更に唇を押し付けられ、俺は彼女の意のままに、ベッドまで連れていかれることとなった。  ・ ・ ・ 「……やられた」 「なぁに、この手紙」  玲子が、彼女の手紙を手に取ったので、俺は急いで起き上がり、慌てて手紙を取り上げる。 「汚い手で触るな、大切な手紙なんだよ」 「あんた、彼女いたんだ。私彼女いないと思ってたからさ~言ってくれたら素直に帰ったのに」 「……いや、この子は彼女とかでは無いんだけど……」 「ふぅん。あっそ。まぁ彼女じゃないなら良いや、明日も来るから」  玲子は立ち上がると、衣服をまとい、颯爽とマンションを去っていった。 「もう来るな!!」  玲子のいなくなった扉に向かい、子供みたいにあっかんべーをする俺。  くそ、奴の所為で眠れなくなっちまったじゃねえか。  ……仕方ないか。こんなことした後で彼女の手紙を書くのも気が引けるが、折角目が冴えちまったから、彼女への返事を今書いてしまうこととしよう。  ボールペンを手に持ち、数十分考えてみた。  が、さっきあった出来事が出来事だけに、学校での些細な思い出など全く浮かばなくなっていた。  まさか、俺がホストクラブ通ってることなんて言えないし、ましてやさっきの出来事なんて……思わず深いため息が出る。  彼女は、俺の生活を通して、自分の人生を構築しようとしているのだ。つまり、俺は彼女にとっての鏡だ。だとしたら、こんな生活をしていては駄目だ。明日以降は、玲子と一生会わないようにしよう。  このままこうしていても、きっとこの手紙を書くことは出来ないだろう。  俺は布団に入り、とりあえず眠ることにした。
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