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「……玲子。何だよ、もうお前とは別れるって言ったはずだが」
「そんなカタいこと言わないでよぉ。私と貴方のナ・カ・で・しょ?」
玲子はそう言うと、俺の手首を掴み、ベッドへと歩いて行った。こいつの考えていることなんて一つしかない。俺は強引に手を振りほどくと、逆に玲子の手首を掴み、玲子を出口へと連れていく。
「帰れ」
「いやだ」
首を振る玲子。
「あのなぁ」
額に手を当ててため息をついたその直後のことだった。
急に唇に柔らかい感触がしたかと思えば、彼女の唇が触れていたのだ。
俺は驚いたものの、彼女に両手首を掴まれると、更に唇を押し付けられ、俺は彼女の意のままに、ベッドまで連れていかれることとなった。
・ ・ ・
「……やられた」
「なぁに、この手紙」
玲子が、彼女の手紙を手に取ったので、俺は急いで起き上がり、慌てて手紙を取り上げる。
「汚い手で触るな、大切な手紙なんだよ」
「あんた、彼女いたんだ。私彼女いないと思ってたからさ~言ってくれたら素直に帰ったのに」
「……いや、この子は彼女とかでは無いんだけど……」
「ふぅん。あっそ。まぁ彼女じゃないなら良いや、明日も来るから」
玲子は立ち上がると、衣服をまとい、颯爽とマンションを去っていった。
「もう来るな!!」
玲子のいなくなった扉に向かい、子供みたいにあっかんべーをする俺。
くそ、奴の所為で眠れなくなっちまったじゃねえか。
……仕方ないか。こんなことした後で彼女の手紙を書くのも気が引けるが、折角目が冴えちまったから、彼女への返事を今書いてしまうこととしよう。
ボールペンを手に持ち、数十分考えてみた。
が、さっきあった出来事が出来事だけに、学校での些細な思い出など全く浮かばなくなっていた。
まさか、俺がホストクラブ通ってることなんて言えないし、ましてやさっきの出来事なんて……思わず深いため息が出る。
彼女は、俺の生活を通して、自分の人生を構築しようとしているのだ。つまり、俺は彼女にとっての鏡だ。だとしたら、こんな生活をしていては駄目だ。明日以降は、玲子と一生会わないようにしよう。
このままこうしていても、きっとこの手紙を書くことは出来ないだろう。
俺は布団に入り、とりあえず眠ることにした。
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