六通

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 ・ ・ ・  翌朝、俺は手紙を出さなかった。  今日は学校だけなので、学校から帰ってきてから手紙書こうと思ったのだ。  その為にも、話題作りをしないとな。  俺は駆け足で学校へと向かった。  ・ ・ ・ ”ごめん、昨日は何を書けばいいか迷って、結局夕方に書いている。  昨日、色々あって、学校の宿題が手につかなかった。  だから、隣の席の子にノート見せてもらったんだ。  急に頼んだのに、その子は優しい笑顔でさ、髪は茶色だった。  きっと、君が大人になったら、あんな感じなんだろうなって子だったよ。  昼食は、学校で売ってる惣菜パン、あそこのパンは、生地が柔らかくて美味いんだよな。  帰り、この手紙の話題に繋がんないかなって思って、何時もと少し違う道を通ったんだ。  そしたら、道を抜けた先には野良猫がいっぱい集まってて、集会みたいなのをしていた。  ま、ボコられるのが怖くて、見つかる前に退散したけれど。  優香は、猫好き? それとも犬派? 文通相手”  ・ ・ ・  帰宅後、俺は必死に学校でのことを思い出して手紙を書いた。そしてポストへ投函し、翌日手紙を確認する。  ・ ・ ・ ”良いんです、私が続けたいと言ったばかりに、ご無理をさせてしまってすみません。  けれど、こうしてお話いっぱい聞けて、話題を作ってくれて、とても嬉しいです。  文通相手様って、おっちょこちょいなんですね。  けれど、文通相手様と直接お話出来るなんて……ちょっと羨ましいな。  私も、早く専門学生になりたいです!  あ、でも、私が専門学生になっても、文通相手様は卒業してるのか(笑)  パン、私も大好きです! 私の家の食パンは、良いものを使っているのですよ! 我が家で数少ない誇れることです。  猫ちゃん良いですね~私が飼っているのはワンちゃんですが、私は動物はみんな大好きですよ!!  親に無理言って、うちのジェイクって言うワンちゃんの写真撮ってもらいました。  この子も、私にとっての誇りです。  良ければ見て下さい。今多優香”  ・ ・ ・  今回は自分のことばかり話していたが、彼女は嬉しそうに――と言うか、嬉しそうな文面で、俺の話を聞き、そして僅かに自分のことも話してくれた。  それも、可愛いくて少し大きめな愛犬の写真付きで。
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