俺が拾った十通の手紙

始まり

　このご時世に、珍しいと思った。

　風に飛ばされて、足元に一通の手紙が落ちてきたのだ。

　そこには、”これを見た人へ”と書いてあり、拾って裏面を見てみると、ご丁寧に住所と名前が書いてあった。な？　このご時世に、随分と不用心なことをしやがる。

　これを見た人へと言うことは、誰かに特定して書いたものじゃない。それじゃあ、俺が開いても問題ないよな。綺麗なロウソクで閉じられた封を、俺はびりりと無造作に開けた。