6人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女からの八通目の手紙以降、返事はぱったりと無くなってしまった。
彼女に何かあったのか、それとも、まだアメリカから帰ってきていないのだろうか。後者であることを信じて、俺は彼女からの手紙が来るまで半年と言う月日、普段の生活に没頭した。勿論、玲子とはあれから一切会っていない。
しかし、そんなある日のことだった。
彼女の家の前を通ると、彼女の家の前には、珍しく多くの人々が並んでいた。それも、真っ黒な服に皆、身を包んで。
「くぅん」
庭先のジェイクも、寂しそうにゆらりと尻尾を振っている。
「……嘘だろ?」
思わず口からこぼれていたが、俺の体は自然と彼女の家の前まで向かっていた。
黒服に身を包んだ人々を掻き分け、俺は家の前の先頭に立った。
「何だね、冷やかしは帰りなさい」
白髪の生えた、優香の父親らしき男性が、俺に言う。俺は首を激しく振り、男性の方にしがみついて言った。
「重田光、文通相手の重田光です!!」
「文通相手……だと」
男性は俺のことをしばし睨んだ。この時間すらも苦痛だ。力づくでも中へ入ろうと手を伸ばしかけたその時、男性の後ろから一人の女性が現れた。
「……お前は」
その女性は、俺が優香への手紙にも書いた、ノートを見せてくれた女性だった。優香が大人になった姿はきっとこうなのだろう。そう思っていたが、まさか、この子が優香……な、ワケ無いよな。
「優香から、話は聞いてた。妹と文通してくれて有難う。姉の、美香(みか)です。この人は、父の香(かおる)。どうぞ、中へ入って」
彼女が優香じゃないと知り、そうだよなと言う思いと、そうじゃ無かったことへの悲しみを半々に感じつつ、俺は中へと入れさせてもらった。
・ ・ ・
「はい」
美香から部屋へと案内してもらう途中、美香から一枚の紙を手渡された。
それを読み進めていくうちに、俺の目からは涙が零れ落ちていた。
最初のコメントを投稿しよう!