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話を聞くと、優香の手術は無事成功したそうで、黒服の人々の列の正体は、優香と美香の母親、優美(ゆみ)さんの三回忌だったのだと言う。愛する人の三回忌を、そりゃあこんな私服着た男に邪魔されたくないよな……俺は香さんに謝った。
すると、香さんはぶっきらぼうに、俺に黒服と数珠を手渡してくれた。きっと、お父さんの物だろう。俺は深く頭を下げて、優香と美香と共に、優美さんに手を合わせた。
・ ・ ・
”こんにちは、昨日は心配かけてごめんなさい。
けれど、光さんと会えて良かったよ。
ぶっきらぼうな人だけど、お父さんも本当は光さんのこと信じてくれていたんだよ。
文字と文章から、人柄がにじみ出てるって。
お姉ちゃんのことは黙っていてごめんなさい。
お姉ちゃん、実は光さんのノート見て名前に気付いたらしいんだけど、文通相手だから知らないふりしときなさいって。
でも、お姉ちゃんも憎めない良い人だって言ってたよ。
あと、手紙見せちゃったって言われて、焦りました。
今思うと、変なことばかり書いていたなって……ごめんなさい!
もう一度変なこと言うようですが、大好きです! 光さん、大大大好き!! 優香”
・ ・ ・
そんなの、俺だって……。
マンションのチャイムが鳴った。もしやまた玲子じゃないよな……警戒しつつ扉を開けると、目の前には会いたくて会いたくて待ちわびていた人がいた。
「光さん! 会いに来ましたよ!!」
「優香……俺も」
「はい?」
「俺も、大好きだぞ!!」
優香を抱きしめると、優香も嬉しそうに背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめ返してきた。
「私も大好きです、光さん!!」
(了)
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