二通

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”焦りすぎ。  文章は、対話と違って時間があるんだから、もっとゆったりとした気持ちで書くと良いよ。  例えば、何か落ち着く音楽を聴きながら書いてみるとか。  本当に、朝は日の光ゆっくり浴びてる? 鳥の鳴き声、ゆっくり聞いてる?  文章も、せっかく手紙の余白が残ってるんだから、詰め込みすぎないで行間を開けて書いてみな?  これからよろしく。文通相手”  ・ ・ ・  初回の手紙は、大体こんなモンで良いだろう。  本当は、一回目から気持ち悪い手紙を書いてドン引きさせてやっても面白いと思ったのだが、どうしてもこの文体で手紙が帰ってきたらと思うと気持ちが悪い。先に文章についてツッコんでおくことにした。  幸い、手紙の住所は近いので、僕はマンションを出て、直接住所の書いてあったポストに投函。  手紙って、時々母さんから届くのを見るくらいだな。返事だって、ろくに返したことがない。母親の手紙の返事を書かず、こっちを書くと言うのもおかしな話だな。なんて思いつつ、僕はなんだかんだで優香さんからの返事をワクワクしながら待っていた。  ・ ・ ・  翌日、僕は手紙を見つけた場所を探してみた。だが、彼女のポストには手紙が見当たらない。  まさか、書いておいて返事なし? なんて思いを巡らせつつ、以前手紙を見つけた周辺へと行く。  前に風が吹いていたのは左だったから、こっちの方へ行けば……と。昨日の記憶を辿って進んでいくと、彼女の家の近くのゴミ捨て場に、一つの手紙を見つけた。宛名は、”文通相手様へ”と、綺麗な字で書かれている。どうやら、緊張は解けたらしい。少しホッとしつつ、封を開ける。  ・ ・ ・ ”やっと出会えた、文通してくれる人。  今まで毎日、こうしてゴミ置き場に捨てるように置いていたんです。  実際、間違えて捨ててくれた人もいたことでしょう。  文章、指摘してくれて有難う。  確かに、日の光は少し浴びたらすぐ窓を閉めていたし、小鳥の鳴き声も聞き流していたような気がします。  そんなことも分かっちゃうなんて、文通相手様は凄いです。  貴方と出会えて本当に良かった。  これからも、よろしくお願いいたします。今多優香”
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