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”そもそも、どうして手紙を書こうと思ったの?
今多優香さんは、今までどういった環境で過ごしてきたの?
理由が分からないので、何を書けばいいのか戸惑っているよ。
貴方の返事を待ちます。文通相手”
・ ・ ・
二通目はこんなモンで良いだろう。今朝、これを彼女の家のポストに投函し、俺は学校へと急いだ。学校とは言っても、専門学校に通う二十七歳なんだがね。
授業を終えると、今日はバイトへと急いで向かった。バイトは夕方から深夜までの勤務。ちなみに、勤務先は小さなホストクラブだ。
これを終え、帰宅する前にゴミ捨て場を覗く。よっしゃ、一通の手紙が落ちていた。手紙を拾い、俺は急いで帰宅。中身を確認した。
・ ・ ・
”ごめんなさい。
何時誰に拾ってもらえるか分からなかったから、細かい話は返事が来てから書こうと思っていたのです。
あのね、私が手紙を書こうと思った理由は、誰もお話相手がいないからです。
いや、話す相手が全くいないわけじゃないけれど、深くお話出来る人がいないのです。
だから、今日はこんなことがあったとか、私はどういう人か、そして貴方がどういう人だとか、そう言うことを話し合える仲の人が欲しいと思ったの。
だから、貴方のことも色々と教えてほしいと思っています。
少なくとも、この手紙は十通は続けたいと思っています。
どうか、宜しくお願いいたします。
追伸、呼び方は優香で良いよ。今多優香”
・ ・ ・
話し相手がいない、か。職業柄、俺には縁遠い響きだが、何だか寂しそうなのは目に浮かぶ。
名前からして女の子だろうな。丸っこい字からすると、ちょっとギャルっ気のある中学生だろう。案外、髪は俺みたいに茶より金に近いのかもしれない。と思うと、そのギャル女子が顔も分からない誰かを思って書くなんて、ちょっと可愛いかもしれない。ついでに、本当に顔も可愛かったら良いなとか考えちまう。
さて、次はどう返そうかな。俺はボールペンを手に取った。
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