一ベル 模擬戦

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 突き詰めれば、人はPCと同じような仕組みで動いている。脳から降りてきた電気信号を神経が読み取り、体は脳の指示通りに動く。人の在り方を機械的に捉えていた方が、コレを扱いやすい。ジェラルドはそう捉えている。  脳から降りてきた全ての指令は、一旦脊髄に集まる。あらゆる指示がそうであるように「右手で握り拳を作る」という指示も、まずは脊髄に向う。教科書通りの仕組みならば脊髄に集められた信号が、右手の筋肉を刺激して握り拳は出来上がる。  しかしジェラルドの送った指示は脊髄を通った際に、神経ではないものによって受信された。  首筋に埋め込まれた、FMI《通称:星屑》(正式名称:フィーリング・マシーン・インターフェース)と呼ばれるマイクロチップが、電気信号から放たれる微弱な電磁波を読み取り、機械語に略して無線を使ってジェラルドの外へと発信する。  信号は操縦室の中を通り、端末によって受信された。  モニターの隅から、巨大な手が現れる。鋼鉄の装甲の中にある何本もの管が伸縮することで指を動かし、握り拳は出来上がる。  ――鉄拳とはこの事だろう、ジェラルドは思う。     
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