一ベル 模擬戦

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 星屑を使って機械の手を動かした《想念》と呼ばれるこの技術。機械の遠隔操作や通信は勿論のこと、眼球に取り付けられた《液晶角膜(ウジャト)》と連動させることで、手ぶらで買い物やゲームを楽しむことが出来る。「両手に自由を…!」CMのキャッチフレーズは星屑と共に広がり、今では世界人口の六割が所持している。 『星屑の感度はどうです?』  頭の中で声が響いた。拳を作った時とは反対の手順で星屑が電気信号を変換し、ジェラルドの頭の中に声を伝えたのだ。 『良好だ、ゲッツェ。お前の方こそ抜かりはないな』  ビジネス街の通りを、拡大表示してモニターに映す。  建物と建物の間に、巨大な機械人形が立っていた。  ――神霊。  古代の壁画に描かれた、巨人に似ていることからそう呼ばれている。しかし神霊は霊でも神でもなく、人の作り出した純然たるロボットだ。星屑を介して動かし、主に工業用と軍事用の二種類がある。モニターに映る神霊は、ロスと呼ばれる軍用の神霊だ。 『隊長、肩肘張らなくても良いんじゃないですかい? こっちは三対一。しかも相手は旧式だ』  ゲッツェの声をかき消すように、女の甲高い声がジェラルドの頭に響く。 『ゲッツェ、侮らないで……。ハダルは古代遺跡から出土したオーパーツなのよ。電子基板すら存在したかどうか危うい、三千年前に作られた神霊なの。どれほどのテクノロジーを持っているのか想像も出来ないわ』  ロスの横から、青い神霊が現れる。     
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