キャッスル・オブ・ローズ 1

3/11
前へ
/34ページ
次へ
 このスニーカーは、神の加護のおかげで、持ち主が生命の危機にある時、最後にセーブした地点まで強制的に転移してくれる。  残念ながら太郎は出先でセーブしていなかった。  なのでスタート地点に戻されたのだった。  大事なスニーカーだったが、太郎は急いで脱ぎ捨てた。 「あー! それを脱ぐなんて、もったいない!!」  青色の豆粒みたいな人が悲鳴を上げて、太郎の周りをぴょんぴょん跳ねた。  その正体はなんと、この世界マーブルランドの神イシュタル。  神は普段、人間の目には見えない。  なので、かりそめの姿をとる。  件の豆粒小人は神イシュタルのかりそめの姿であり、太郎には『若様』と呼ばせている。 「そんな場合じゃねえっての! マジ熱ぃ!!」  太郎は足を押さえて転げ回った。  さいわいというか、不可解というか、服もズボンも一片の焦げもなかった。  よれたTシャツとひざの出たジャージで、完全に部屋着なのだが、太郎は冒険初日から着用している。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加