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第1章 1節 はじまりの街
王都から脱出してから6日が経った。
この国は王政が敷かれていないところのようだ。
民は自由に生き、働き、毎日を平和に暮らしている。
とても平和で健全、そんな印象だ。
汚れのない、白い街。
建物がこの街の特色を、歴史を物語っているようだった。
ぼーっとしてないでもう一回。
クロの言葉で我にかえる。
ムー「あぁ、うん。」
クロ「心ここにあらずか。何を考えてる?」
僕はクロを一瞥した後、少し考え、まとめる。
ムー「君と出会って僕は【法】....つまり君の言う神の力を手に入れた。神と契約した者に与えられた力を。」
クロ「そうだね。それがどうしたって言うんだ?」
ムー「僕がなぜ選ばれたのかは知らないけれど、この力を使って、一体何にをしろって言うんだろう。」
クロ「神の力って言うのは本来裁きや、創造の為にある。君に与えられたそれは私たち神の力とは全く異なるものなんだ。」
黙っているとクロが続けた。
クロ「人は人を裁けない。人を裁くのは神か、法律だ。そして人を守るのも神か法律だ。自分の身を守る為の法律とでも言うのかな?こんな暴力的な法律あってはならないけどね。」
はは、とクロが笑う。
クロ「君は追われている身。13歳の子供が一国の王に抗う力があると思うか?ましてや神持ち、しかもそれがゼウスときた。それは運命がどうこうの話じゃない。ただの押し付けがましい絶望だ。」
先ほどのクロとは打って変わって、怒っているように見えた。
クロ「だから世界樹ゴフェルが現れ、運命に抗う力を与えられ、彼らの法律に守られた。」
ムー「それは何度も聞いたよ。法を使いこなして、世界を変えろとでも言うのかな?」
クロ「そこまでの事は強要はされていないと思うけれど....。まず君は君自身を守る力を手にすればいい。それが世界樹ゴフェルの意思だ。その後の事はその時に考えよう。」
はぁ、困った子供だ。
そんな事を言いたそうな表情をしているクロを僕は無視して、立ち上がった。
ムー「空気を圧縮って、ピンと来ないんだよなぁ。んー....。」
そんな事をぼやいているとどこかから叫び声のような、あるいは罵声のような声と共に、ドドド、と誰かがこちらに全力で向かってきた。
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