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車から降りて、自販機でコーヒー缶を2缶買う湊。
「……ん」
そのうち1缶を、俺に手渡す。
「……サンキュー」
湊も俺も、一言も話さず……缶コーヒーを飲んでいたら……
「翔くん」
「……ごほっ!……っ!……なっ……何だよっ!いきなり……」
湊から、『くん』付けで呼ばれた後は、ろくなことがない……
思わず身構えてしまう。
「俺の……本当の息子にならないか?」
……は……?
本当の息子……って言ったって……湊には、血を分けた息子が3人いるじゃねぇか……
「陽菜を、浅木の姓にするのが嫌だとか、そういう訳じゃなくて……翔に、音羽を名乗って貰いたい……」
そう言って、湊の視線が、俺の右手に注がれる。
右手を怪我した俺を見て……
この湊が、あんなに動揺するとは……思わなかった……
桜太くんが呆れるくらい……
湊のせいじゃない……俺が勝手にしたことだ……
『俺のせいで、翔の大事な右手を怪我させた……』
湊の代わりに舞子に会いに行くと決めたのは、俺なのに……
「俺の大事に思うものに……誰にも手出しさせたくないんだ……それもあって、翔のお母さんに挨拶しようと思ったんだ……」
どうでもいい奴には、偽物の笑顔貼り付けてあしらうのに……
自分の懐に入れた存在には、絶大に甘いんだよな……湊って……
昔から……そうだ……
「4つ違いの息子で良ければ、いいよ」
「……マジ……で?」
提案してきて、何でそんなに驚くかな?
「マジで」
つーか、湊の俺の扱いって、めちゃくちゃ軽かったのに……
いつから、こうなった?
「よしっ!翔……記念にハグしよう!」
「……ハグはいいから、早く行くぞっ!」
でも、まぁ……いいか……
口に出して、今更言えないけどさ……
俺は湊を……尊敬してるんだ……
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