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バスタブに浸かり、脚を伸ばす。
ひとりで入るには、広すぎる……
昨日は翔くんと入ったから、余計にそう感じるのかも……
浴室の窓ガラスを、強い雨が打ち付けるのが目に入る。
そういえば……
今日一日曇り空だった……
すっかり日も暮れてしまって、辺りは暗いけど……厚い雲が空を覆っているのが、見える。
雨だけなら……まだ大丈夫……
窓から外を見ていると、青白く光る稲光が天から降り、次の瞬間……大きい雷が鳴った……と、同時に雨足が強くなり……目の前が真っ暗になる。
「……やっ……」
お湯の中にいるのに、かたかたと身体が震え出す。
あの日を境に、雷と暗闇が駄目になった……
バスタブから出て、翔くんを呼ぶことも出来ない。
どうしよう、どうしよう……怖いっ!
「陽菜ちゃんっ!」
懐中電灯を照らしながら、翔くんが浴室に入ってくる。
翔くんが来てくれて、ほっとするのに……パニックに陥ってる私は声を出せない。
「待っててっ!」
脱衣場の洗濯機の上に、懐中電灯を置いて、その光を、浴室に向けてくれる。少ししてから、翔くんがバスタブに入り、震えている私を、抱きしめてくれる。
「俺がいるから、もう大丈夫だよ」
翔くんの腕に抱きしめられ、翔くんの体温を感じて……安堵する。
「大丈夫!陽菜ちゃんはひとりじゃない!」
それでも、まだ震える私の身体……
翔くんが、私を抱く腕を、強く
する。
翔くんの腕の中は……安心できる……いつから、そう思ったんだろう?
翔くんの言葉……前にも聞いたことある……一言も違わない……この言葉……
『俺がいるから、もう大丈夫だよ』
『大丈夫!陽菜ちゃんはひとりじゃない!』
雷と暗闇が駄目になったのは……小学4年生の頃から──
夏休みで、兄妹5人でここに遊びに来ていた。
5人でかくれんぼで遊んでいた時
……私が隠れたのは……使用されていないスタジオだった……
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