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防音のスタジオに、雷の音は聴こえなかったけど、近くに墜ちたのか……地響きのような大きい音が響いて、一瞬にして、目の前が真っ暗になった。
自分がどの位置にいるのか……どうすればいいかなんて、分からなくて……呼んでも誰も来てくれない……誰も、気付いてくれない……
まるで……世界にたったひとり、取り残されたような気持ちだった……
それが……数分のことだったのか……分からないけど……
真っ暗な世界で、どうすることも出来なくて、震えて……ただ泣いているだけ……
あの時……あの時も……
私を探し出してくれたのは……
翔くんだった……
大きい身体が、震える私を包んでくれた。
『俺がいるから、もう大丈夫だよ」
泣いている私の頭を、何度も何度も、優しく撫でてくれた。
『大丈夫!陽菜ちゃんはひとりじゃない!』
お父さんでも、お母さんでもない……無条件に、優しく包んでくれる存在……
その頃から、私……
翔くんが特別な人になってたんだ……
中学の時……自分の気持ちが分からなくて……
翔くんが、会うたびに違う女性と居るのが、凄く嫌で……
無意識に、避けるようになってた私に……
翔くんの態度は、優しいままで……
雷が伴う天気の時は……
『陽菜ちゃん、今日は寄り道しないで、早めに帰っておいで!雷の予報みたいだから』
徹夜明けの、疲れた顔してるのに……私が登校する時間に、エントランスで、それを伝えるために待っててくれたり……
雷が鳴って、家に帰れない時は……車で迎えに来てくれたり……
ただ……私を心配してくれていた……
お父さんと、お母さんの子供だったから……
素直に……ありがとうも言えなかったのに……
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