STEP 4

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高校を卒業して、モデルの道に進んだのは…… 少しでも、翔くんに近付きたかったから。 20歳離れてても……女として翔くんを見てるって、 気付いて欲しかったから。 2年前から、周囲にも……翔くん本人にも、気持ちを隠さなくなった。 言葉で伝えて、態度で示しても……翔くんには、伝わらなくて…… 中学、高校の6年間…… 避けて、翔くんから話し掛けてくれても、素直な態度で接することが出来なくて…… だから、本気にしてもらえなかったし……私が翔くんを嫌ってるって、思ってたんだよね…… それが180度態度を変えて、猛アピールされたら、翔くんが戸惑うのも、仕方ないって……今なら分かる。 翔くんは、なついてた子がなつかなくなって……少しは寂しいって思ってくれたかもしれないけど…… 『好き』って言ってるのに……私と距離を取ろうとして、私のこと避け始めた半年前から……昨日まで……本当に辛かったんだから…… 絶対に叶わないって、思ってた…… それでも……好きだから諦められなかった…… 翔くんが……翔くんだけが、 大好きだから…… あの頃と変わらない、翔くんの温かい腕の中…… でも……あの頃と違う…… 私に向けてくれる、翔くんの想いは…… あの頃と違う…… 暗闇の中で、確かに感じる翔くんの温もり…… もっと……ちゃんと確かめたくて、震える腕を、翔くんの首に回す。 翔くんがいてくれるなら……怖くない…… この腕を……離したくない。 「陽菜ちゃん……時機に停電も復旧すると思うから……大丈夫だよ」 翔くんの手が、私の後頭部を優しく撫でる。 「……うん……翔くんが抱きしめてくれているから……大丈夫……ひとりだったら……パニックになってた……すぐに来てくれて、ありがとう」 「そりゃ来るでしょ!大事な陽菜ちゃんが怖い想いしてるの、分かってるし……それに、例え陽菜ちゃんが雷や、暗いの苦手じゃなくても……来てたよ。真っ暗なとこで動いて、怪我でもしたら大変だしね……陽菜ちゃんを、守るのは俺の役目!」 当然……みたいに、そう言ってくれる。 当たり前なんかじゃない…… 自分より、誰かを思う優しさは、当たり前と受け取るものじゃないって…… 小学4年のあの頃に、知った。
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