0000 魔法使いは友達がいない

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 そういう容姿で生まれることがあると聞いたことはある。納得してふんふんと頷くが、しかし、なんだか女の表情は不満気だった。 「……どうしてきみたちはこう、なんだ、わたしの容姿を病気にしたがる」 「うわ地毛かよ」  思わず素で驚いてしまった。うわとか言っちゃったよ。 「まあ、病気なんだけれど」 「やっぱ病気なのかよ!」  なんなんだこいつ。ちょっと悪いことしたな、とか思ったじゃねぇか。俺の心配を返せよ。……いや、病気なら心配するのは間違いじゃないのか。 「とは言え、そんなものは三百年ほど前に治療済みだ。外部作用によって生活に支障がないようにしているだけだから治ったとは言えないのかもしれないが」 「やっぱお前、俺の心配を返せよ」  なにを自慢気に鼻を鳴らしているのだろうか。人をおちょくるのが趣味ならきっとこいつに友達はいないのだろうなと思う。 「本当に失礼なやつだな……」 「友達いんの?」 「……いないけれど」  悔し気に下唇を噛む仕草がちょっと子供っぽくてかわいい。さっき三百年以上生きてると同義のことを言っていたため、それを考えるとババアの若作りなのが非常に残念なのだが。 「……殴ってもいいかな」  眉間に深いしわを作って立ち上がりかけた女の肩を急いで抑え、椅子に座らせる。     
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