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「……暴力は良くないと思うんですよね。ていうか、絶対痛いじゃんお前のパンチ。絶対見た目からは想像も出来ないような重い拳じゃん。痛いのダメ、絶対。殴ったら手伝わないよ俺」
必死の抗議を繰り広げる俺に、呆れたように嘆息して俺の手を払った女は頬杖をついて見上げてくる。
「別にきみじゃなくても構わないのだけれど?」
「必ず俺でよかったと言わせてやる。約束しよう」
必死だった。心が読まれることを理解して調子に乗っていたさっきまでの自分をぶん殴りたい気持ちでいっぱいだった。本当にすみませんでした。
「なにかっこいいこと言ってるんだよ、全く……」
「惚れちゃいそうだろ?」
「ぶん殴っていいかな」
「本当すんません」
ふざけたこと抜かす口はどの口だよ、ったく。
――がっと頬を掴まれた。
「この口だよ」
「ふみまへぇん」
片手で両頬を掴まれているだけなのに頭が動かない。本当に怖いんですけど、小便漏れそう。この人外に殴られるくらいならこのまま死んだほうがよっぽどマシだと思う。
「人だよ、わたしは」
まじで? 他の世界とやらでは人間が三百年生きられるのだろうか。ていうか、離してくれません?
「どうしよっかなぁ。すごく失礼なこと言われたし」
にまにまと意地の悪そうな顔で頬を掴む力を強めたり弱めたりする。
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