第一章  捜査本部

11/11
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 刑事役の二人は金で雇われたヤクザ者。嘗て、広瀬検事に有罪にされた組織暴力団の組長の仇を討ってやった、と哄笑した。 「だから広瀬検事の事務官にあんな暴行を働いたにか」、厳しい追及だった。 自慢げに暴行の様子を語り、「面白かったぜ」、と言って笑ったらしい。  それ以上に捜査関係者を不快にしたのは、警察官役の若いホストの言葉だった。彼も高畠検事に棄てられた、もう一人の恋人だった。  彼は、異常性格者。そしてバイセクシャル。  供述中も薄笑いを浮かべていた。「気味悪い奴だ」、と取調官が語っていた。 「泣き叫ぶ女を甚振るのは、楽しくて堪らないね。二宮環を選んだのは、僕だよ。お高い女検事を思いっ切りいたぶって暴行する。許してくれと泣き叫ぶ女を無理やり暴力で犯すなんて、考えただけで堪らないよぉ」、男は瞳に薄気味悪い光を浮かべて、舌なめずりするように語ったらしい。  その話を聞いた真梨子は、寒気を催した。典型的な性格異常者は、普段は常任と変わらない。自分の仕事の重要性を、改めて感じていた。  そして二宮環も、東京地検に戻っていた。  地検の事後処理に追われる日々。その合間を縫ってTD警備保障のガードシステムに三人を訪ねて環が現れたのは、事件から十日が経った日だった。 「早見さん、大変お世話になりました。田辺さんも、頼もしく護って頂いて心強かったです」 「これからもお付き合いを、 どうか宜しくお願い致します」 「真梨子さん、闘う女友達は初めてです」、そう言って手を差し出す環の手を握ると、その耳元で囁いた。 「社長には、あの事を話したんですか」  真っ赤になって、「これから」、と言う環を見て吹き出した。  “氷の女”が赤くなっていると思うと、何やら可笑しい。環が帰って行ってから早見が真梨子に聞いた。 「女検事さんの秘密ってなんだよ、真梨子」 「女だけの秘密だわ。教えない」  笑みを浮かべて歩き去った真梨子に、「全く女って奴は・・」、ぶつぶつ独り言を言って渋い顔をした。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!