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刑事役の二人は金で雇われたヤクザ者。嘗て、広瀬検事に有罪にされた組織暴力団の組長の仇を討ってやった、と哄笑した。
「だから広瀬検事の事務官にあんな暴行を働いたにか」、厳しい追及だった。
自慢げに暴行の様子を語り、「面白かったぜ」、と言って笑ったらしい。
それ以上に捜査関係者を不快にしたのは、警察官役の若いホストの言葉だった。彼も高畠検事に棄てられた、もう一人の恋人だった。
彼は、異常性格者。そしてバイセクシャル。
供述中も薄笑いを浮かべていた。「気味悪い奴だ」、と取調官が語っていた。
「泣き叫ぶ女を甚振るのは、楽しくて堪らないね。二宮環を選んだのは、僕だよ。お高い女検事を思いっ切りいたぶって暴行する。許してくれと泣き叫ぶ女を無理やり暴力で犯すなんて、考えただけで堪らないよぉ」、男は瞳に薄気味悪い光を浮かべて、舌なめずりするように語ったらしい。
その話を聞いた真梨子は、寒気を催した。典型的な性格異常者は、普段は常任と変わらない。自分の仕事の重要性を、改めて感じていた。
そして二宮環も、東京地検に戻っていた。
地検の事後処理に追われる日々。その合間を縫ってTD警備保障のガードシステムに三人を訪ねて環が現れたのは、事件から十日が経った日だった。
「早見さん、大変お世話になりました。田辺さんも、頼もしく護って頂いて心強かったです」
「これからもお付き合いを、 どうか宜しくお願い致します」
「真梨子さん、闘う女友達は初めてです」、そう言って手を差し出す環の手を握ると、その耳元で囁いた。
「社長には、あの事を話したんですか」
真っ赤になって、「これから」、と言う環を見て吹き出した。
“氷の女”が赤くなっていると思うと、何やら可笑しい。環が帰って行ってから早見が真梨子に聞いた。
「女検事さんの秘密ってなんだよ、真梨子」
「女だけの秘密だわ。教えない」
笑みを浮かべて歩き去った真梨子に、「全く女って奴は・・」、ぶつぶつ独り言を言って渋い顔をした。
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