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彼女の横顔は薄っすらと困惑を浮かべ、
そして両手と一緒に首を振って、それを断った。
しかし彼から再び何かを言われ、短く躊躇をしたものの
おずおずと彼女の細い手がブーケに伸びていく。
だが僕は、黙ったまま彼女がそれを受け取るのを
見過ごすことは出来なかった。
「ナッちゃんっ!」
大きく掛けた僕の声に、彼女たちが同時にこちらを見る。
「冠くん……?」
当然ながら驚く彼女に歩み寄りながら、この時の僕の頭には、
今の彼女が仕事の立場にあるのか、そうでないのかなど
気遣う余裕は全くなかった。
だから自分が、どんな顔をしていたかも分からない。
だが、彼女の目の前の若い男の顔は、明らかに強張っていた。
そして、
「あの……」
再び口を開きかけた僕に続くように、彼女が言った。
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